取扱業務のご紹介
行政書士の業務は
- ・「官公署に提出する書類」の作成とその代理、相談業務
- ・「権利義務に関する書類」の作成とその代理、相談業務
- ・「事実証明に関する書類」の作成とその代理、相談業務
- ・その他特定業務
があります。
行政書士の業務の範囲は非常に広く、士業の中でも非常に広い分野を網羅する法務の専門家です。
我が事務所では遺言、家族信託、補助金・助成金コンサル業務をメインとしてお客様にご提案させていただきます。
家族信託って何?
「家族信託」の定義
「家族信託」とは、一言でいうと『財産管理の一手法』です。
資産を持つ方が、特定の目的(例えば「自分の老後の生活・介護等に必要な資金の管理及び給付」等)に従って、その保有する不動産・預貯金等の資産を信頼できる家族に託し、その管理・処分を任せる仕組みです。いわば、「家族の家族による家族のための信託(財産管理)」と言えます。
家族・親族に管理を託すので、高額な報酬は発生しません。したがって、資産家のためのものでなく、誰にでも気軽に利用できる仕組みです。
「家族信託」のイメージと機能
※ 現在の信託法は、2007年(平成19年)9月30日に施行「家族信託」の代表的なメリット
1.後見制度に代わる柔軟な財産管理を実現できます。
成年後見制度(法定後見・任意後見)は、負担と制約が多い!
毎年の家裁への報告義務の負担。資産の積極的活用や生前贈与、相続税対策ができない。
元気なうちから資産の管理・処分を託すことで、元気なうちは、本人の指示に基づく財産管理を、本人が判断能力を喪失した後は、本人の意向に沿った財産管理をスムーズに実行できます。加えて、積極的な資産運用・組替え(不動産の売却・買換・アパート建設等)も、受託者たる家族の責任と判断で可能となります。
2.法定相続の概念にとらわれない“想い”に即した資産承継を実現できます。
通常の遺言では、2次相続以降の資産承継先の指定不可!
2次相続以降の資産承継者の指定が可能!【例】“長子承継”が難しい地主・経営者のケース
3.不動産の共有問題・将来の共有相続への紛争予防に活用できます。
共有不動産は共有者全員が協力しないと処分できない。 将来、兄弟が不動産を共同相続してしまうと同様の問題が生じる。
共有者(又は共同相続人)としての権利・財産的価値は、平等を実現しつつ、管理処分権限を共有者の一人に集約させることで、不動産の“塩漬け”を防ぐことができる!
「家族信託」のデメリット
特にありませんが、強いて挙げるなら、税務的なメリットが特段生じないのがデメリットでしょうか。
家族信託は、このような方々が検討されています
1.ご自身(あるいはご家族)の意思能力(判断能力)の低下に備えた対策を考えたい方々
*信託契約の当事者が既に意思能力(判断能力)を失っていると看做される場合は、契約行為ができないため、本制度の活用はできません。
(資産の管理処分)
ご自身(あるいはご家族)の意思能力(判断能力)が低下してしまった後でも、ご自身(あるいはご家族)名義の資産の管理・処分・運用を家族が明確な権限をもって継続して行えるようにしておきたい。
中長期に渉る資産の承継対策が必要で、その途中で意思能力(判断能力)が低下しても当初の設計に従った資産承継対策が継続できるようにしておきたい。(不動産の購入・建設、売却、買い換え等の資産の組み換えなど)
(介護対策)
ご自身(あるいはご家族)の介護に必要な費用を、ご自身(あるはご家族)名義の資産を処分することで捻出したい。
ご自身(あるはご家族)が介護で施設に入居することとなった後の自宅の管理処分を家族ができるようにしておきたい。
(不動産の共有対策)
親族が共有名義で保有している不動産の処分を検討したいが、将来的な共有者間のトラブル発生や、共有者が高齢による意思能力の低下・相続発生により、不動産の処分に支障をきたす恐れがある。
限られた不動産を複数の相続人に残すことになるが、相続人の「共有」は避けたい。
(成年後見制度との兼ね合い)
ご自身(あるいは家族)の意思能力(判断能力)が失われた後、成年後見制度の利用を考えているが、制度利用に伴う手続きやその後の事務負担を考えると別の財産管理手法は無いか検討している。
2.遺言に代わる資産の承継方法を検討している方々
(遺言制度との兼ね合い)
ご自身(あるいは家族)の相続が発生した際に、資産の凍結の期間をできるだけ短くしたい。
ご自身(あるいは家族)が正常な意思判断ができる間に、家族(推定相続人)全員の合意を法律的に有効な形で書面に残しておきたい。(現行制度では生前に行った遺産分割の合意(生前分割)は無効です)
3.二次相続以降の資産承継を考える方々
ご自身に子供が居ないため、妻(配偶者)の死後、代々受け継がれてきた資産は兄弟の子(甥・姪)など、指定する人物に引き継がせたい。
子が障がい者であるため、両親が亡くなった後に、子が死亡した際の資産の分配先を世話になった施設などに決めておきたい。
4.円満な事業承継対策を講じておきたい方々
複数の兄弟がある中で、特定の1名に事業承継をしたいが、他の兄弟の遺留分相当の金融資産は不足している。その上で持ち株が分散しない策を講じたい。
事業は息子に承継することを考えており、タイミングを見て株式の譲渡を考えているが、経営権を譲るにはまだ早いと考えている。
家族信託を検討する際に整理しておくこと
家族信託制度は、皆様の大切な「資産」と「想い」を、信頼できる家族に託する制度です。 よってこの制度のご利用を検討される際には、以下の点を整理しておかれることをお薦めいたします。
信託する財産は何か(信託財産)
保有資産の中で、どの財産を信託財産として託すかを決める必要があります。もちろん保有資産の全部でも一部でも構いません。
誰に信託するか(受託者)
信託契約には「信頼する受託者」の存在が不可欠です。専門的な知識をお持ちであるかどうかというよりも、委託者の想いを理解しその実現に向けて誠実に取り組まれる方である必要があります。
何のために信託契約を結ぶか(信託目的)
信託契約を結んだ結果として、誰に対しどのような利益を期待するのかを明確にする必要があります。受託者は、この信託目的に従って信託財産の管理処分を行いますので、目的を明確にしておくことが非常に重要です。
家族信託のご検討から組成、そしてその後のお手伝い
家族信託制度を検討し、実際に進めるためには、以下の専門家の助言、アドバイス、業務委託が必要となります。(各名称は一般社団法人 家族信託普及協会が使用する名称となります)
家族信託コーディネーター
お客様(所有者とそのご家族)との相談窓口としてヒアリングを重ね、どのような信託の仕組みを構築すべきかの企画・設計を行い、必要に応じて専門家をアレンジする役割です。
税理士・司法書士等の専門士業の方々がこの家族信託コーディネートを担われるケースも多々ありますが、一方で、お客様と最も強固な信頼関係を築き、お客様の家族関係やご家族の状況、保有資産内容を把握できている保険業界(保険代理店、生命保険のプランナーなど)、 不動産業界(管理会社、宅建業者、ハウスメーカーなど)、介護業界(ケアマネージャー、有料老人ホームなど)の方々などがその役割を担われることも多くなってきております。
家族信託コーディネーターは、お客様の生い立ちやご家族関係、経済状況、保有資産、将来予測されるご家族の出来事(結婚、出産、養子縁組、離婚等)など様々な情報をしっかりとヒアリングし、ご本人及びご家族の“想い”を整理させて頂く重要な役割となります。
家族信託専門士
ご家族内で合意された信託内容を、法律面あるいは税務面でのチェックを行い、信託内容を反映した契約書面や公正証書の作成など、専門士業がそれぞれの職責で実務を行います。
どのような信託を組成するかによって、どのような実務者が必要となるかは変わって参ります。上記家族信託コーディネーターが必要となる専門家と連携して信託組成に取り組むことになります。
家族信託を組成するのに必要な費用
家族信託を組成するのに必要な費用のイメージとしては以下をご参考にしていただければと存じます。
費用項目
家族信託のコンサルティングに関る費用
- ご要望のヒアリング、整理
- 家族会議への参加、調整
- 適切な専門家のアレンジ、調整
具体的な手続きに関る費用
- 公正証書作成に関る費用
- (不動産)不動産登記に関る費用
- (不動産)登録免許税
- 信託口口座開設に関る費用
費用の目安
不動産を含む場合:信託財産額(固定資産税評価額+金銭)の1.5〜2%
現金のみの場合:大凡20万円〜40万円
遺言とは?遺言の効力や遺言の基礎知識を解説
「遺言」とは被相続人の最終的な意思を示すもので、相続や相続税対策を考えるときにあったほうがよいものです。遺言を残そうと思っている人はどうすればよいのか、相続人になり遺言書を見つけたらどうすればよいのか、将来の被相続人と相続人の双方にとって必要な基礎知識を確認しておきましょう。
遺言とは?
「遺言」とは、被相続人(遺言者)が自分の財産について誰に何を残したいのか、最終の意思表示をするものです。遺言は日常的には「ゆいごん」と読みますが、法律用語としては「いごん」と読みます。
遺言を書面にしたものが遺言書です。遺言書があれば、原則としてその内容のとおりに遺産を分割するルールになっているので、相続人間の争いが起こりにくくなります。相続財産の換金や売却などもスムーズにできるので、相続人は相続税を支払いやすくなります。
また、遺言書を作れば、遺産を法定相続人だけでなく自分が財産をあげたいと思う人に残すことや寄付をすることもできます。介護をしてくれた長男の嫁に財産を残したい、内縁の妻に財産を残したいというケースなどが該当します。
遺言のすすめ
相続をめぐる争いが増えています。
司法統計でも家庭裁判所へ持ち込まれる相続に関連する相談件数や新たに申し立てられる調停の件数が右肩上がりに増加していることが報告されています。
いったん相続をめぐる争いが起きると相続人の感情的対立に発展し、親族関係が断絶状態になることも少なくありません。
相続をめぐる争いを避ける最も有効な手段は遺言を残すことです。
法的効力を持つ項目「遺言事項」とは
遺言書に法的な効果を確保させるには、意思表示の内容を法律上定められた3つの方法(公正証書遺言、自筆証書遺言、秘密証書遺言。詳細は後述)で作成する必要があります。そのうえで法的な効力を持つ項目は「遺言事項」として民法により定められていますので、まずは遺言事項とその例を確認しましょう。
遺言事項とその例
①相続に関する事項
- 誰がどの財産をどのくらい相続できるか指定できる
- 法定相続人以外の人にも財産を残せる(遺贈)
- 法定相続分とは異なる相続分割合の指定
- 特別受益の持ち戻しの免除
- 相続人の廃除、廃除の取り消し
②財産の処分に関する事項
- 財産の寄付の指定
③身分に関する事項
- 婚姻外の子供の認知
- 未成年の子供の後見人の指定
④遺言執行に関する事項
- 「遺言執行者」の指定
遺言執行者について
遺言の内容を実現することを「遺言の執行」といいます。遺言の執行には様々な手続きが伴います。たとえば被相続人の預金口座の解約手続き、不動産の所有権移転登記の手続きとそれに続く相続人への名義変更の手続きなどです。こうした遺言の執行に関わる一切の行為の権利と義務を有するのが「遺言執行者」です。
遺言執行者を立てずに遺言を執行しようとすると、一つひとつの財産の相続について相続人全員分の署名押印、手続きへの立会いなどの手間が発生し、遺言の執行がなかなか進まなくなります。一方、遺言執行者を決めておけば、相続手続きの一切を任せることができるので、遺言の執行がスムーズに進むという効果があります。したがって、遺言書を作成するなら遺言執行者を立てるほうがよいでしょう。
法律上、遺言執行者を立てなければならないケースもあります。それは遺言の内容に「推定相続人の廃除」「子の認知」を記す場合です。推定相続人の廃除とは、相続する権利を有する人の権利を剥奪することです。「自分の面倒をみなかった長男には遺産を相続させない」といったように、特定の相続人に遺産を渡さないことを意味します。子の認知とは、婚姻外の子ども(非嫡出子)を自分の子どもだと認めることです。
遺言執行者を指定する方法には主に次の3つがあります。
- 遺言者(被相続人)が遺言書に誰を遺言執行者にするか記載する。
- 遺言者が遺言書に「第三者に遺言執行者を指定してもらうこと」を記載する。
- 遺言者の指定がない場合、相続人等の申立てにより家庭裁判所が選任する。
遺言執行者には相続人や親族もなれますが、弁護士や税理士など利害関係のない第三者に依頼したほうが無難でしょう。
遺言書の種類と効果
遺言を記した遺言書には「公正証書遺言」「自筆証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類があります。主に利用されているのは公正証書遺言と自筆証書遺言です。いずれを選択するかは何を優先するかによります。それぞれのメリット・デメリットを通じて特徴を把握しましょう。
公正証書遺言
公正証書遺言とは、法律の専門家である公証人に依頼して作成する遺言書です。公証人が遺言者から遺言の内容を聞き取り、法律に定められた方式に則って遺言書を作成します。したがって法律的に確実に有効な遺言書が作成でき、不備により遺言書が無効になるおそれが極めて低いのが最大の特徴でありメリットです。信頼性が高く安心感のある遺言書だといえます。
他にも次のようなメリットがあります。
遺言者に遺言能力があるかも公証人が確認するので、後から遺言能力の有無で争いが起こるケースはほとんどありません。遺言書の原本は公証役場に保管されるので紛失や改ざんのおそれがないことに加え、全国どこの公証役場でも亡くなった人が遺言書を作成したかを検索でき、遺言者の相続人、受遺者、遺言執行者などの利害関係者は遺言書の写し(謄本)の再発行を、原本が保管されている公証役場に依頼することができます。
一方、デメリットはメリットと表裏一体。公証人に遺言書の作成を依頼するため、必要書類の準備などの手間がかかります。また、財産の額に応じた手数料もかかります(下表)。公証役場に出向く際には、親族以外で証人2人を立てる必要があります。証人立会いのもとで公証人が遺言書を作成するため、遺言者の財産の内容が明らかになってしまいます。
公正証書遺言のメリット・デメリット
メリット
- 公証人が作成するので法律的に確実に有効な遺言書が作成できる。
- 遺言者の遺言能力の有無を問う争いが起こりにくい。
- 遺言書の原本が公証役場に保管されるため、紛失・改ざんが起こりにくい。
- 公証役場で検索すれば相続人は遺言書を見つけられ、写しの再発行が受けられる。
デメリット
- 公証人に依頼するため手間と手数料がかかる
- 証人(親族以外)を2人立てる必要があるため手間がかかる。
- 公証人と証人に財産の内容が知られる。
相続財産の価額(相続人または受贈者1人当たり)に対応する公証人手数料
財産の価額 | 手数料 |
---|---|
100万円以下 | 5,000円 |
100万円超〜200万円以下 | 7,000円 |
200万円超〜500万円以下 | 1万1,000円 |
500万円超〜1000万円以下 | 1万7,000円 |
1000万円超〜3000万円以下 | 2万3,000円 |
3000万円超〜5000万円以下 | |
5000万円超〜1億円以下 | 4万3,000円 |
1億円超〜3億円以下 | 4万3,000円 +(1億円超過額5,000万円ごとに1万3,000円ずつ加算 |
3億円超〜10億円以下 | 9万5,000円 +(3億円超過額5,000万円ごとに1万1,000円ずつ加算) |
10億円超 | 24万9,000円 +(10億円超過額5,000万円ごとに8,000円ずつ加算) |
自筆証書遺言
名称のとおり、遺言者が自筆で遺言の内容を書面にする遺言書です。遺言書の全文、それから日付と氏名を自書し押印すればよいので、紙とペンと印鑑があれば遺言者が自分1人で作成できます。自分で作成するので費用もほとんどかかりません。この手軽さが最大の特徴でありメリットです。また、遺言者は生前、遺言書の内容や存在を自分以外の人に秘密にすることができます。
一方、デメリットはどうでしょうか。手軽であるとはいえ、全文自書するのはかなりの労力を必要とします。高齢であれば尚更です。また、法律に定められた方式にしたがっていないと、せっかく作成した遺言書が無効になってしまいます。保管の仕方によっては紛失や、誰かに見つけられて改ざんされる恐れもあります。遺言者が遺言の存在を秘密にしたまま亡くなると、相続人が遺言書の存在に気付かないことも考えられます。また、認知症などにより、遺言者に意思能力がないことを利用して、特定の相続人が自分に有利になるような内容を書かせたのではないかという疑念が生まれやすく、争いに発展するリスクがあります。
なお、遺言書を開封するときには家庭裁判所で検認の手続きが必要になるため、手間がかかります。このように様々なデメリットがあるため、弁護士や税理士など多くの専門家は公正証書遺言を勧める傾向があります。
自筆証書遺言のメリット・デメリット
メリット
- 紙とペンと印鑑があれば遺言者が自分で作成できるので手軽。
- 費用がほとんどかからない。
- 遺言者は生前、遺言書の内容や存在を秘密にできる。
デメリット
- 全文自書するのは労力を要する。
- 法律に定められた方式に従っていないと遺言書が無効になる。
- 紛失や改ざんのおそれがある。
- 相続人が遺言書の存在に気付かないおそれがある。
- 遺言者に遺言能力があったのか、相続開始後に相続人間で争いが起こる場合がある。
- 開封時に家庭裁判所で検認を受ける必要があり、手間がかかる。
しかし民法改正により、自筆証書遺言のルールが変わり、上記のデメリットの一部が解消されています。ルール改正の内容は大きく2つあり、①「自筆証書遺言の方式緩和」と、②「自筆証書遺言の保管制度」です。
①「自筆証書遺言の方式緩和」
2019年1月13日以降に作成される遺言書に適用されるルールです。遺言書に「財産の○○をAに相続させる」と記す場合、その財産の詳細を記載した財産目録を付けるのが一般的です。従前は財産目録も自書する必要がありましが、改正によりパソコンでの作成も可能になりました。遺言者以外の人が作成することもできます。また、財産が不動産であれば登記事項証明書を、預貯金であれば通帳の写しを財産目録として添付することもできます。
②「自筆証書遺言の保管制度」
2020年7月10日から始まった自筆証書遺言を遺言書保管所(法務局)で預かる制度です。これにより、自筆証書遺言のデメリットの一つである紛失・改ざんのおそれがなくなります。遺言書は所定の様式に則っているかを確認されるため、方式の不備による遺言書無効のリスクがある程度軽減されると考えられます。また、保管制度を利用すれば、遺言者の死後、相続人は遺言書が預けられているかを確認できるので、相続人が遺言書の存在に気付かないというリスクも低くなります。家庭裁判所による検認も不要となります。
以上のとおり、①と②により自筆証書遺言は以前より有効で利用しやすいものになっています。
秘密証書遺言
秘密証書遺言は利用されるケースが少ないので簡単に触れておきましょう。
秘密証書遺言とは、名称のとおり遺言の内容を誰にも見せずに秘密にしたまま、公証人と証人にその存在だけを証明してもらう遺言のことです。
遺言者はまず遺言書を作成します。自筆証書遺言のように自書という制約はありませんが、署名は自書します。押印もしたうえで封筒に入れ、遺言書に押印したのと同じ印鑑で封印します。そして遺言書を公証人と証人2人以上の前に提出し、封筒の中身が自分の遺言であることと、氏名・住所を申し述べます。すると公証人が、遺言が提出された日付と遺言者が申し述べた内容を封紙に記し、それに公証人、証人、遺言者が署名・押印します。これで遺言書の存在が証明されます。遺言書は遺言者が持ち帰り、保管します。
遺言書の方式や内容については公証人の確認を受けないため、不備により無効になるおそれがあります。保管は遺言者自身で行うので、紛失・改ざんのリスクや相続人が見つけられないおそれもあります。また、保管制度を利用していない自筆証書遺言と同様に、家庭裁判所での検認が必要になります。
遺言書を見つけたらどうしたらいい?
故人の遺品整理をしているときに自宅や貸金庫などから遺言書が見つかるケースがあります。その場合、どうすればいいのか手続きと注意点を確認しましょう。
遺言書を見つけたらすること
見つけた遺言書が自筆証書遺言(保管制度の利用なし)や秘密証書遺言の場合、相続人などは遺言者(故人)の最後の住所地の家庭裁判所に「検認」の手続きを申し立てます。検認とは、遺言書の現状(形状や日付、署名、内容、訂正の状態など)を明らかにし、偽造などを防止するための手続きです。
検認の申立てをすると相続人全員に検認の通知が届き、検認期日に相続人の立ち会いのもと遺言書を開封し内容を明らかにします(ただし遺言書の内容が有効か無効かを判断する手続きではありません)。この手続きが終わると遺言書の内容を実行に移せるようになります。
なお、公正証書遺言の場合には検認の手続きは不要です。自筆証書遺言でも保管制度を利用していれば検認の手続きは不要となります。
遺言書を勝手に開封するのは法律違反
検認手続きをしないで遺言書を開封すると5万円以下の罰金が科されるおそれがあります。加えて、開封した人が遺言書の内容を改ざんしたのではないかという疑いをかけられ、相続人間で争いが起こることも考えられます。内容が気になるかもしれませんが検認前の開封は厳禁です。
遺言がなかった場合の相続について
亡くなった人が遺言書を作成していなかった場合、遺産を相続できるのは法定相続人だけになります。したがって法定相続人間で遺産の分け方を話し合う遺産分割協議をすることになります。
法定相続人に該当するのは被相続人(故人)の配偶者と子です。子がいない場合には直系尊属(親や祖父母)、直系尊属もいない場合には被相続人の兄弟姉妹が法定相続人になります。なお、被相続人が生前に離婚している場合、離婚した元配偶者は法定相続人にはなりませんが、元配偶者との間の子は法定相続人になるので注意しましょう。
遺言書がないと被相続人の財産の内容も不明なので、まずそれを調べる必要があります。遺産分割協議がスムーズに進めばよいのですが、まとまらない場合には家庭裁判所に遺産分割の調停を申し立てることになります。調停が成立しないと家庭裁判所での審判となり、遺産分割が成立するまで何年もかかってしまうケースもあります。
また遺産分割が終了するまでの間、相続財産は相続人全員の共有となるため、財産の処分が難しくなり、相続税に充てる資金を確保するのもままならなくなる場合があります。
故人の遺言書の有無を知る方法
自宅などで遺言書が見つからなかった場合、どうすればよいのでしょうか。公正証書遺言や秘密証書遺言の有無は公証役場で調べられます。
公正証書遺言の原本は公証役場に保管されています。故人が正本や謄本を手元に置いていなかった場合には、相続人かその代理人が必要書類を持参し、故人の住所地の最寄りの公証役場に出向いて問い合わせれば、遺言書の有無がわかります。その公証役場に遺言書が保管されていれば、相続手続きに必要な原本の写し(謄本)を再発行してもらうことができます。保管場所が他の公証役場であっても検索できるようになっています。
遺言書の有無の問い合わせに必要な書類は下記のとおりです。
- 故人が死亡したという記載のある戸籍謄本や除籍謄本
- 自分が相続人であることを証明する戸籍謄本
- 本人確認書類(運転免許証など写真付きの身分証明書)
- 印鑑
秘密証書遺言も公証役場で有無を調べられます。ただし秘密証書遺言は公証役場に保管されてはいません。公証人が遺言書の存在を証明したことだけが記録として残っているので、確認できるのは遺言書の有無だけです。
自筆証書遺言については、被相続人が2020年7月10日に新設された保管制度を利用していれば、相続人などが遺言書の有無を調べられます。相続人は遺言書保管所(法務局)に「遺言書保管事実証明書」の交付を請求すればOK。全国どこの遺言書保管所(法務局)でも交付請求ができます。相続手続きの際には「遺言書情報証明書」の交付を受けることが必要です。
遺言のタイミング
遺言書というと死期が迫ってから書くようなイメージがあるかもしれません。しかし、「遺言能力」といって遺言者である本人に十分な判断能力があるうちに作成しないと、法的に有効な遺言書だと認められないおそれがあります。認知症になってから作成した遺言書は無効だということです。
したがって心身ともに健常であるうちに作成する必要があります。現在、何歳かにもよりますが、できるだけ早く取り組んだほうがよいでしょう。定年退職したときなど、人生の節目に遺言書を作成するという考え方もあります。
遺言書は何度でも書き直しができます。財産の変化や引き継がせたい人に変化があったらそのときに修正すればいいので、気になっているならあまり先送りにしないことをお勧めします。
遺言の内容を変更または取り消すことはできる?
一度遺言書を作成しても、時間の経過とともに状況が変化し、内容の変更や取り消しをしたくなることもあるでしょう。民法では「遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる」と定められています。特に結婚・離婚・再婚、子どもの誕生などで法定相続人に変化があった場合には遺言書の見直しが必要になります。
遺言書は一部だけ変更することもできますし、取り消して新たに作り直すこともできます。作り直すと日付の新しい遺言書が有効となります。
変更や取り消しの方法は遺言書の方式により異なります。ポイントを見ていきましょう。
遺言書の方式別 変更・取り消しのポイント
公正証書遺言の場合
変更でも取り消しでも新たに遺言書を作成することになります。遺言書作成後に新たな財産を取得した場合、その分だけの公正証書遺言を作成することもできますが、遺言書が複数になるため相続発生時に混乱のおそれがあります。したがって変更でも取り消しでも新規に遺言書を作成したほうが、将来の相続人の争いが避けられます。なお、公正証書遺言の変更・取り消しは公証役場に保管されている原本で行います。手元に保管している正本・謄本で変更・取り消しをしても無効なので注意しましょう。
自筆証書遺言の場合
変更する部分が少ない場合には、その部分を自分で変更します。遺言の変更箇所を示し、変更内容を記入のうえ署名し、変更箇所に押印します。ただし変更の方法に不備があると変更が無効になるので要注意です。取り消す場合には、前の遺言書を自分で破棄すれば取り消したことになります。
秘密証書遺言の場合
秘密証書遺言は開封すると無効になるので、変更・取り消しの場合は最初に作成したときと同じ手順で作り直すことになります。
なお、遺言は遺言者が亡くなると効力を発生しますが、その段階になっても遺言の取り消しができる場合があります。遺言が相続人からの強迫によって作成したことが明らかになったケースなどが該当します。ただし、子の認知など身分関係の事項は取り消し不可です。
おわりに:付言事項に最後のメッセージを
冒頭でもお伝えしたとおり遺言は被相続人の最終の意思表示です。遺言には財産の分け方を示すだけでなく、そこに至った遺言者の動機や心情も記すことができます。これを「付言事項」(ふげんじこう)といいます。付言事項に法的効力はないのですが、遺言者の最後のメッセージとなって相続人の心に届き、財産の分け方に多少の不平等があったとしても「そういう理由なら」と相続人が納得するケースが多いようです。活用を検討してはいかがでしょうか。
なお、遺言があれば遺言者が好きなように財産を分けられるとはいえ、法定相続人には遺留分といって遺産の最低保証分があります。これを侵害していると争いの種になりがちなので、そこだけは注意して分け方を考えたほうが無難でしょう。
行政書士が行う補助金・助成金申請業務とは?
「補助金」は、経済や地域の活性化等を目的とした資金であり、「助成金」は、雇用や労働環境の改善等を目的とした資金であります。基本的には返済不要であり、個人や事業者向けに国や地方公共団体等から資金を提供するものです。
行政書士が行う補助金・助成金申請業務
行政書士が取り扱う補助金・助成金の種類には以下のとおりです。まず、申請から受給までの流れと具体的な種類について紹介していきたいと思います
補助金・助成金申請から受給までの流れ
(1)申請要件の調査・確認
申請要件を満たしているか依頼者と確認していきます。交付を受けたい補助金・助成金の募集要項を調べて、申請可能か否かを判断します。
(2)申請書の提出
申請要件を満たしていることが確認できましたら、事業計画等を申請書に記載していきます。
事業計画につきましては、実現可能なものにして、依頼者の会社の経営状況や目標をわかりやすく記載していくことがポイントです。そして、必要な添付書類等を添えて申請書を提出することになります。
(3)審査
補助金・助成金の種類、応募状況によっては、2次審査や面接がある場合もあります。審査には約3か月程度の期間場合によっては半年を要する場合もあります。
(4)補助事業の実施
採択が決定された場合、事業計画に従って補助事業を実施する必要があります。支出の根拠となる見積書や領収書等はきちんと整理しておきます。事業計画に大きな変更がある場合は、変更申請書を提出する必要となる場合があります。
(5)報告書類を作成・提出
報告書類を作成して、提出します。
(6)補助金・助成金の交付
補助金・助成金の交付を受けることができます。ただし、交付後も、一定期間、定期的に事業の状況報告をする義務があるものもあります。
行政書士が取り扱う主な補助金・助成金の具体例
補助金・助成金をいくつか紹介したいと思います。
➀事業再構築補助金
ウィズコロナ・ポストコロナの時代の経済社会の変化に対応するために新市場進出、事業・業種転換、事業再編、国内回帰又はこれらの取組を通じた規模の拡大等、思い切った事業再構築に意欲を有する中小企業等の挑戦を支援するという補助金です。
第10回公募は6つの枠に分かれています。
最大1,500万の【最低賃金枠】や最大5億円の【サプライチェーン強靭化枠】など、企業や取り組み内容に応じて選択し応募することが可能です。
枠によっては、売上要件の撤廃、2回目の採択が可能、コロナ以降の法人設立でも申請可能となっております。
一方で、取り組みに求められる政策性はこれまで以上に明確になり、枠によって要件も非常に細かく定められました。
②革新的ものづくり・商業・サービス開発支援補助金(ものづくり補助金)
この助成金は、「国際的な経済社会情勢の変化に対応し、足腰の強い経済に対応するため、経営力向上に資する革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセス改善を行う中小企業・小規模事業者の設備投資等の一部を補助する」というものです。対象者は認定支援機関の全面バックアップを得た事業を行う中小企業と小規模事業者です。要件は2つあります。
- 「中小サービス事業者の生産性向上のためのガイドライン」で示された方法で行う革新的なサービスの創出・サービス提供プロセスの改善であり、3~5年で「付加価値額」年率3%及び「経営利益」年率1%の向上を達成できる計画であること
- 「中小ものづくり高度化法」に基づく特定ものづくり基盤技術を活用した革新的な試作品開発・生産プロセスの改善を行い、生産性を向上させる計画であること
③小規模事業者持続化補助金
この補助金は、「事業の継続的な経営・発展・維持」を目的とし、新たな販路の開拓に対して経営計画を作成し、その計画の取り組みの経費の一部を補助するものです。対象者は、中小企業と小規模事業者です。
- 卸売業・小売業・サービス業(宿泊業・娯楽業以外)は、常時使用する従業員の数が5人以下であること
- サービス業のうち宿泊業・娯楽業・製造業その他は、常時使用する従業員の数が20人以下であることです。
④地方創造的起業補助金(創業補助金)
この補助金は、新たな需要や雇用の創出等を促して、日本経済を活性化させることを目的としており、起業時に必要な経費の一部を補助するものです。対象者は起業・創業や第二創業を行う個人、中小企業と小規模事業者です。要件は、下記1〜3の全てを満たす必要があります。
- 使用目的が事業の遂行に必要なものと明確に特定できる経費であること
- 交付決定日以降、補助事業期間内の契約・発注により発生した経費であること
- 証拠書類等によって金額、支払い等が確認できる経費であること
その他の補助金、助成金
- 経営改善計画策定事業補助金
- 創造技術研究開発費補助金
- 地域申請コンソーシアム研究開発事業補助金
- 産業技術実用化開発事業費助成金
- 環境活動補助金
- 高齢者住宅改修費用助成金
- クリーンエネルギー自動車等導入促進対策費補助金
様々な補助金・助成金の種類があります。
行政書士による補助金・助成金コンサルティング申請業務の注意点
➀公募期間の確認
補助金や助成金は募集期間というものがあり、募集期間が1か月程度と短いものが多いです。そのため、公募期間をしっかりと確認して、期間内に申請する必要があります。
②事業計画を綿密に
事業計画が大変重要となります。統計データをとり、多方面から検証し、事業がどのように進んでいくのかということを、理由を交えながら細かく書く必要があります。事業計画については、行政書士が綿密に依頼者と相談していきます。
③原則補助金は後払い
補助金は後払いが原則であるため、今すぐ欲しいと思ってもすぐに受給できるわけではありません。公募の開始から補助金が実際に交付されるまでに約1年半という期間がかかる場合もあります。
④行政書士は厚生労働省系の助成金は取り扱うことができません
行政書士はほとんどの補助金・助成金申請を取り扱うことができるのですが、厚生労働省系の助成金は社会保険労務士が取り扱うもので、行政書士は取り扱うことができません。
補助金・助成金申請業務の費用
補助金・助成金の種類が多いので一律に定めることができません
「着手金」をお預かりし、補助金・助成金の交付を受けられた場合は、補助金・助成金額の数15%程度を成功報酬という形を基本とさせていただいておりますが、個別にご相談ください。